器の扱い方~その4~陶器の特徴 ヒビ割れ、赤いシミ、ぷつぷつアナ・・・

器の扱い方~その4~陶器の特徴  ヒビ割れ、赤いシミ、ぷつぷつアナ・・・
土ものの特性、をある程度理解していただくだけで、その扱い方も自ずと意識していただける部分もあるかと思います。

器には素材によって陶器と磁器の違いがあります。磁器は陶石(カオリン石)と呼ばれる石を粉砕し粘土に作り変えたもので品質の違いはあれども一様に白く粒子の細かい、硬い焼きのものです。

陶器はといいますと地中より採取された焼成に適したあらゆる粘土を用います。その成分も様々で、極端な話ですと同じ山でも南斜面と北斜面とで焼成後の出来上がりに差ができる場合もあります。


⑥陶器の皿(左)と磁器の皿(右)

磁器は原料の調達、精製、そして白く硬くするための安定した焼成に神経が注がれます。

陶器は原料の調達、精製はもちろん大変なのですが、安定した焼成は磁器の仕事では必要とされますが、陶器は前提としてそれらは思わぬ変化を起こすものです。
裏を返せば陶器はその思わぬ変化のもたらす意外性を楽しむことができるところが磁器とは違った特徴でもあります。


趣きのある風合い-赤く焼きムラができる場合もあれば真っ白に仕上がる場合もあります。

その胎土は様々な粒子の結集したものですから小さな隙間があり、水などは染み込むことがあります。

焼き物は本焼きと呼ばれる1300℃で焼成され完全に焼締りますと備前焼のように釉薬が掛かっていなくても問題ありません。

陶器は釉薬をかけますがそれは完全にその隙間を埋めるものではなくある程度のコーティングの役割をするにとどまります。
それよりは土色から様々な色合いに変化させてその雰囲気を楽しむことに重きを置いた釉掛けになります。



凹凸のある器の表面-下地の土が見えるくらい穴が開いている場合もあります。


釉薬はガラス質のものでそれ自体、焼成時、生地の粘土との収縮率の違いから細かなひび割れをおこしているものもあります。これを貫入と呼びます。


細かな貫入を意図的に入れています。とても高い製陶技術と精錬された原料土が必要となります。

まとめますと磁器は完全に堅密で水を通さず、白くて変化のない器肌です。

陶器は様々な土を使い、粒子は一律ではなく、焼成時の収縮率の違いから釉薬にも隙間ができて水が染み込みやすい。
陶器はこのように変化に富んだ土を使い、幅広い表現ができます。
また、使い込むほどに茶渋などが浸透し、器肌に変化が現れます。




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これを滋味溢れる表現として、陶器を昔から日本人は好んで作ってきました。
と、まぁ、あまり深く考えず、使うほど洗うほどに味わい深くなるジーンズのようなもんでしょうかね

器の使い始めに昔の人から鍋で焚いてから、と教えられた人もおられるでしょうが
、何でもかんでもする必要はありません。急に熱湯などに入れれば破損の原因にもなります。

陶器を買って帰ってきて、いざ使おうとお湯を入れた時にまれにツーンとクスリの匂いというか、なんとも言えない感じの匂いが感じられることがあります。

これは流通過程で陶器の生地の中になんらかの要因が重なり、匂いが吸着している可能性があり、それがお湯の蒸気でムワ~と上がっているものと思われます。
また、マグなどの使い始めコーヒーを入れて机になどに置いていたら底の方から湿気が出て、新聞紙がヨレヨレになったりすることがあります。

使い始めの陶器はまだ生地の目が粗く隙間から湿気がおりてくる場合があります。
いずれの場合も使い込めば徐々になくなってきます。でも気になる方はすぐになくす方法として、イメージとして、その隙間を埋める、作業をしていただくとすぐに止まります。


①まずはお鍋でお米のとぎ汁を温めます。
②火を消して落ち着いたらそーっと器を入れます。(グツグツしてる中に入れると、ヤケド、破損の原因になりますのでぬる目のお湯でかまいません)
③重湯(ゆるいお粥または温めたお米のとぎ汁)が器にしみ込んだかな、くらいで完了です。
④あとは軽く洗って乾かしてください。

乾かす時は湿気がこもるので伏せないでください、この時は高台の内側にも水分がありますので転がらないように寝かせて置くのがベターです。

ただ、あまり神経質に考えず、使い込むほどに変わっていくもん、とお考えいただければ幸いですし、むしろわたくしは上記の処理をせずにいきなりお茶などを入れて渋をつけることから始めます、、が

器の使い方は人それぞれ。

色の変化、などが気になる、というお客様への説明は茶碗屋さんとしましてはしっかりとせなあきません。
この場を借りたご説明で少しでも気持ち良く、味わい深く、器をお使いいただけますと幸いです。