【京焼・清水焼の技法】
 三 島 (みしま)

清水焼イメージ

三島手には器全体に貫入と呼ばれる釉薬の細かなひび割れが入ります。
茶器として使い込むほどに貫入に入り込む茶渋などは、白い化粧土にも影響しやがて様々な風合いへと変化します。
使い込まれる過程において、使い手の癖によって同じ個体でも二つとして同じ風合いになりません。
唯一無二の“朽ちた美”を生み出し楽しむ。
その美意識は日本人の心に現代にいたるまで深く刻まれます。

 

(製作技法)
まず下地となるロクロを使った生地造り。
この時生み出される造形美が全体の出来栄えを左右します。

オリジナル陶器・トイレ便器の絵付け



様々な道具を組み合わせ焼成前の柔らかいうちに印紋を一つ一つ手押しで打ち込んで行きます。
力を加減しながら綺麗に並べていく様はまさに職人技。

オリジナル陶器・トイレ便器の絵付け


印刻した後、白い化粧土を塗り“大まかに”を拭き取ると窪みの部分に色が入ります。
1300℃前後で本焼き焼成します。

オリジナル陶器・トイレ便器の絵付け

この時、窪みになっていない部分にも若干の化粧土が残り、
仕上げとして全体にかけた釉薬と相まって様々な釉調・風合いの変化をもたらします。
手仕事による三島手には同じデザインでも一つ一つの個体差が必ず現れます。


(三島の由来)
三島とは朝鮮半島からもたらされた粉青沙器を写したもので桃山時代の茶人に茶器として見立てられ
三島手と呼ばれ珍重されてきました。

朝鮮李朝15~17c(東京国立博物館蔵)

文様のパターンが静岡県の三島大社が発行する暦に似ていることから三島手、暦手とついたとか、
諸説あります。(手、とは手法・技法のこと)

 

三島暦・文化文政期(国立国会図書館蔵)

華やかな色絵付けが多い京焼・清水焼の中で一際渋く、逆にそれが目に留まる、そんな器が三島手です。
現代においても「土鍋」などでよく見られる三島手は、だれもが見たポピュラーな量産陶器へと受け継がれることになりますが、

手仕事によって生み出される京焼・清水焼の三島手は、茶の湯の黎明期、
思いがけない変化をもたらすその色調が、茶人たちの心をくすぐり
侘び寂びの概念を確立するための、一つの要素となります。

 

陶工紹介森里陶楽ページへ戻る